決定的瞬間
決定的瞬間に偶然出会うことがある。
それはNHKの将棋中継で起こった。
日曜日の朝なにげにテレビをつけると、将棋をやっていた。ぼくはとくに将棋ファンではないが、対局中の橋本八段はキャラが立ったユニークな棋士で見知っていた。その日もトレードマークの茶髪に金色の和服で対局していた。NHK杯の準決勝、それなりに権威のある大会だ。
対戦相手は行方八段、こちらはスーツ姿でちょっとおしゃれなプリントのネクタイをしていた。
棋上は終盤にさしかったたところ、橋本やや劣勢らしい。
橋本の持ち時間がなくなり、これからは1分以内に指さなくてはいけない。
1分はあっとゆう間にすすみ、残り5秒で橋本がパチンと持ち駒を指した。
その瞬間、どちらかからアッ!とゆう声が聞こえた。
行方が頭を抱えた、橋本のすごい逆襲手だったのか??
ほどなく立会人が行方八段の勝利を宣言し、いつものように慇懃に一礼した。
呆然の表情の橋本八段、
ナント、2歩だったのだ。(縦の列に自分の歩を2枚おく禁じ手、やると即負け)
初心者ならいざしらず、東大より入るのが難しいといわれるプロ将棋界でもトップクラスの棋士が・・大事な対局、しかもTV中継中に!
面白かったのは勝った方も頭をかかえていたところ、あってはならない事故に遭ったような心境だったのか。
将棋中継では別室に解説者がいて経過解説をする。勝負が決まると対局室で対戦棋士を交えて感想戦をおこなう。この時はかける言葉につまったのか、入室後しばらくの沈黙があった。
橋本は「すいませんでした、失礼いたしました。」とゆうのが精一杯。
行方もどう反応すればいいかわからない様子で下を向いていた。(なかなか好人物だな)
橋本八段は次世代を担う人気(愛称はハッシー)も実力もある棋士だ。
これにめげずに頑張って欲しい、もし名人になれたら史上初の2歩の名人とうたわれることだろう(笑)
決定的瞬間に遭遇した休日の朝でした。