それも愛

性懲りもない日々をつらつらと

水の音きく枯山水

奥多摩のJR青梅線御嶽駅にほど近く、御岳渓谷にかかる橋を渡ったところに玉堂美術館はある。

日本画家の川合玉堂を記念したこじんまりとした美術館だ。

玉堂翁はとても人望があったらしく、没後、アトリエのあった御嶽の地に記念館をつくろうとの声が上がり多くの人の寄付(天皇家を含む)で建てられたそうだ。

建物の設計は巨匠・吉田五十八(前の歌舞伎座とかの設計者)で、低く水平の庭に対する垂直の細めの柱列がほどよいリズムをうむ趣のある建物。

小さな美術館で展示もそう多くはないが、季節ごとに展示替えもあり先日は「春のおとずれ展」、琳派風の金地の六曲一隻の屏風が見応えがあった。玉堂の作品は品がありまた人や動植物への温かい眼差しが感じられる物が多く、この作品にも梅木に泊まる可愛らしい小鳥が数羽描かれていた。

 

ここに枯山水の庭があり、僕はその庭がとても気に入っている。

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広さも同じくらいだと思うが、京都・竜安寺の石庭を彷彿させる。低めの漆喰塀(竜安寺は土塀)に囲まれた枯山水の庭に、上品に石組みがなされている。

建物は多摩川の御岳渓谷沿い(傾斜地)に建っているのだけど、周囲の風景ととても馴染んでいると思う。庭の端角に立派なモミジが植えてあるが、塀のすぐ外にも桜や銀杏・モミジなどの木があり、また対岸には奥多摩の山々の景色が望め、庭と一体感がある。(まあそこが作庭者の意図なんだろうけど)

 

そしてなによりも素敵なのは、川のせせらぎが聴こえてくるところだ。

枯山水は水を使わずに水の流れを再現しているのだけど、そこに本当の水音がきこえてくると臨場感がわき、別世界にいるようだ。

また幸い京都と違いここはあまり混んでない。竜安寺のように方丈はないが、深い軒の下にベンチが用意されている。

ベンチに腰掛け、しばし静かに枯山水を眺め、せせらぎの音を聴くと贅沢な時間を過ごせる。

ホントはここで一献やりたいのだが、そうだ次回は水筒に・・