それも愛

性懲りもない日々をつらつらと

「若冲」を読んだ

小説「若冲」を読んだ。

先日直木賞候補になった作品だ。350ページにおよぶ長編だが、日曜日に一気に読んだ。とゆうより読まされた。それほどの筆力があった。

孤高の天才画家 伊藤若冲の生涯を史実とフィクションを織り交ぜ、最後まで飽きさせない濃密な作品だった。(直木賞とってもいいんじゃない!)

作者の澤田瞳子氏は京都生まれで同志社大学で日本史を学んでいる。

澤田氏の京都に関する広範な知識に加え生まれ育った生粋の感覚が、小説の舞台である京都の町や登場する老若男女さまざまな京都人のリアリティに反映されていている。「京都」を知るにもいい作品だろう。

若冲は京都錦市場の老舗青物問屋の跡取りに生まれたが、家業は早々に隠居し画業に専心したのはよく知られている。

だが85歳と長命の生涯にはさまざまな波乱があったようだ。市場の利権争議に巻こまれたり、70歳を過ぎて内裏を含め京都の中心地の大半が焼失した天明の京都大火で焼け出されたことなどの史実が物語にうまく取り入れてられている。この本を読み、生涯旺盛に制作をつづけ、あれだけ斬新で多彩な作品を残した情熱にあらためて感嘆した。

小説は8編で構成され、それぞれにテーマがあり山場があるので、読みやすい。

若冲がひたすらに画に向かう動機がなき妻への懺悔・鎮魂であるとの設定は、作者のフィクションだが、それがこの作品の肝となっているのでそれでよしとしよう。

 

映画になってもおかしくない、その際の主演は京都出身の小林薫にお願いしたい。