それも愛

性懲りもない日々をつらつらと

スコセッシ vs 狐狸庵先生

映画「沈黙」を観た。

監督のスコセッシは僕の観た映画のベストテンに入る「レイジング・ブル」など生々しい暴力描写で有名な監督だ。

原作は遠藤周作キリスト教信仰を主題とする小説で、あのスコセッシ監督が30年近く前から映画化を構想していたと聞き意外な印象を持った。

スコセッシは、ニューヨークのイタリア移民街で生まれマフィアが暗躍する社会で育ち 、子供の時はカトリックの司祭になろうと思っていたらしい。

なるほど、社会の底辺に身を置き気質的にも欠陥を持つ人間が、同時に社会に受け入れられたい希望も抱え、もがきながら生きていく・・的な作品が多いのはそうゆう背景があるのかと今更に思った。

遠藤周作は狐狸庵先生として親しまれ、テレビなどでも活躍した人気作家だ。

ユーモア溢れるエッセイもあるが、小説はシリアスで人間の本質的な問題に迫ったものが多い。

「沈黙」は、人生の一大事でも何も助けてくれない「神の沈黙」を通し信仰の本質を解明しようとした作品で、無信仰の僕でも考えさせられるものが大きかった。

映画を見て、カトリック信者でもあった遠藤氏のキリスト教の捉え方をもう少し知りたくなり「イエスの生涯」を読んだ。遠藤氏の解釈のよると神とは無力でただ愛だけの存在で、だがそこにこそ救いがあるとのことらしい。

難しいことはわからないが、「愛とは伴走すること」という氏の考えには賛同したいと思う。