それも愛

性懲りもない日々をつらつらと

気になる女

中野始発のバスに乗り後方の席に座ると、ほどなく女が乗って来た。

別にバスに女が乗るのは空から雨が降るのと同じくらい珍しいことではないが、わざわざブログに書くのはそれなりに印象的だったからだ。

女は中年どまんなか(四十半ばくらい)で顔は夏木マリに少し似てた。もし夏目雅子にそっくりだったら、それはすぐにでも友達に話したくなるくらいの出来事だが、夏木マリならそれほど大それたことではない。(ただし僕の旧友で夏木マリの信奉者にして現在僧侶をやってるFだったら胸をときめかせただろう。彼の部屋には昔等身大の手招きする夏木マリのポスターがあった)

女は僕の前の席に座った。まず目についたのは赤系の茶髪いわゆる亜麻色の髪だった。「亜麻色の髪の少女」と言うくらいだから、中年ど真ん中にはどうかと思うが、それは個人の自由だ。

服は、白地に大きな花柄が入ったノースリーブのワンピースだった。これも中年どまんなかにしてはやや派手だが、夏らしいとも言えるので、まあ許容範囲だ。

膝丈は短めですらりと伸びた足は合格点だった。これには全く不満はない。

ただすらりとした足の先の靴に少し違和感があった。ゴールドとシルバーの中間くらいの色の光物のパンプスだった。

僕もシルバー系のスニーカーを持っていたことがあったが、それを履くときは全体的にはやや地味目の服装にしてバランスを取ってたつもりだ。

亜麻色の髪、白のノースリーブのワンピース、光モノの靴、そして顔は夏木マリの組み合わせは、どうしても僕にはアンバランスに映った。

そんなハデ系な装いにしては口紅は無色系だった。

車内でせわしげに見てた携帯電話はかなり派手な赤だったのに(こうゆう場合、ルージュは赤いのが定番な気がするけど)

その赤い携帯を見つつバス停の車内表示を確認していた。おそらく初めての場所にいくのだろう。

この路線は普通の住宅地を走るバスなので、乗ってる人もまあほぼフツーの感じの人がほとんどだ。なのでこの夏木マリ2号は僕から見るとかなり浮いていた。

こうゆうときはどうしても割り切れない感じがする。

なぜこのバスに乗っているか?目的は何だろう?(ただの帰宅ではなさそうだし)

こんなときホームズやワトソン君なら彼女の職業や乗車の目的を三つくらいにしぼれるのだろうが・・・

夜型の飲食系のお仕事の出勤前に急に人に会う用事ができて、初めての路線に乗ったマリちゃんかなあ、用事が済んだあとで赤い口紅をさすんだろうな、などと考えているうちに、肉屋の前にあるバス停で彼女は降りた。

さよならマリちゃん、きっともう会うこともないだろう。