漱石さんの転職
今朝の新聞で、夏目漱石が東京帝国大学を辞し、朝日新聞に入社した時に発表した「入社の辞」を読んだ。
漱石40歳のときだそうだ。
当時の東京帝国大といえばいまの東大よりステイタスもあっただろうし、日本も今よりずーっと貧しかった時代に当時の新興企業である新聞社に転職する、とは世間も驚いたらしい。
「我輩は猫である」「坊ちゃん」ですでに人気作家になっていた漱石を専属作家として朝日新聞がスカウトしたのだが、給料がべらぼうに上がったわけではない。(それなりに高給ではあるが)
2足のわらじをやめ、作家一本で身を立てていく道を選んだ。
思い切りのいい決断で、潔よさを感じる。
「入社の辞」ではユーモアを交え教師生活のことも書いているが、創作に専心するこれからの意気込みと覚悟が読み取れる。
漱石は日本を代表する大作家としてのイメージが強いが、49歳と意外と早くに亡くなっている。
転職後10年足らずのうちに、「三四郎、それから、こころ、道草、明暗」などの名作を残している。
転職時の決意どおり、素晴らしい業績をあげたわけだ。
去年久しぶりに漱石の本を読んだ。「夢十夜」とゆう短編集で古さなど感じさせない名文だった。
入社の季節にいい文章に会い、ちょっとうれしい朝でした。