片足立ちの女
悲劇は高田馬場で起きた。馬場だからといっても決闘ではない。
ぼくは午後3時すぎに仕事の用事で電車を待っていた。
各駅停車を待っていたが、先に準急電車が来た。
ドアが開き次々と乗客が乗り込む、するとドアが閉まる間際に若い女性が駆け込んできた。
セーフ!間一髪間に合ったが、ドアが閉まると同時に片方のハイヒールがホームに転がってきたのだ。
だが電車は何事もなかったかのように出発した。その女性は口を開けてホームの方を見てるようだった・・
準急は高田馬場からは六つの駅を通過する。次の停車駅は鷺ノ宮だ、10数分はかかるだろう。
その間あの女性はハイヒール片足立ちで過ごすのだろうか?それとも開き直って裸足の方は床につけてナナメって過ごすのだろうか?まあどちらにせよ他の乗客の視線を浴びなければいけない。
そしてしばらくその状況を耐えた後、鷺ノ宮で降り駅の事務所に向かうのだろう。
「すいません、靴を高田馬場のホームに落としましたので、確認してていただけますか」
靴は高田馬場駅に保管されている確率が高い。そうなるとまた落とした駅に取りに行くのが通常だろう!(また片足立ちで)
駆け込み乗車がいけない理由がよくわかった事件だった。