それも愛

性懲りもない日々をつらつらと

湯平温泉は寅さんのロケ地だった

夏季休暇で帰省中に大分県の温泉に行った。

大分の温泉とゆうと全国区ブランドになった湯布院もいいが、近年やや俗化した感もあるので、もう少し静かな温泉地を探すことが多い。

今回は由布院から10キロほど離れた湯平温泉に出かけた。

 

山間の道を分け入って行くと、花合野川(かごのかわ)の渓流沿いに20軒ほどこじんまりした旅館が立ち並んでいた。

開湯は室町時代と古く戦前は九州で別府に次ぐ人気温泉地として賑わったらしいが、今ではだいぶ色あせた感じで老朽化した建物も目に付いた。

予約した宿に着くと、外国からの先客がいて、仲居さんが英語で会話をしていた。

「なかなかやるな」と感心していると入り口にトリップアドバイサーのアワードステッカーが貼ってあった。

あごひげの似合う受付の男性に聞いて、平日では一軒だけやっているとゆう食堂に昼飯に行った。

江戸時代に作られた歩きやすいとは言えない石畳の道を下った先にある店は望外に良かった。ふっくらと焼けたうなぎを食べ、地酒を呑み僕の湯平温泉の評価ポイントはアップした。

英語のできる仲居さんといいこの食堂といい、見かけ以上に実力のある処かもしれんと思った。

 

宿に戻り入館すると、何やら見たことのあるお三方の写真が飾ってあった。

 

寅さん(渥美清)、沢田研二、田中裕子 だ。

 

宿で話を聞くと、ここ湯平温泉は僕が大学生だった頃観た「フーテンの寅 花も嵐も寅次郎」のロケ地で、主演の三人はじめ俳優陣がこの宿に泊まったとのこと。

事前には知らなかったので「へ〜 ! 」だった。

宿は全9室のこじんまりした旅館で大正時代創業だそうだ。オーソドックスな和風のしつらいの造りだがこれ見よがしな高級旅館ではなく価格も2食付きでひとり15,000円と良心的だった。

旅館自慢の洞窟温泉はミストサウナ状態でなかなか気持ち良かった。昔は混浴だったらしいが、今では壁で仕切ってある。(俳優のみなさんもここに入ったのかなあ)

露天風呂は開放感があり、周りの林から蝉の声の大合唱が聞こえた。

 

共同風呂が何軒かあるくらいで、これといった娯楽施設もない温泉街だが、静かで川沿いの景色が目にやさしいいい温泉地だった。

昭和5年に山頭火がこの地に逗留し、気むづかしい氏には珍しく気に入ったと自身書き残している。(温泉街の一角に「山頭火ミュージアム」がある)

「しぐるるや人の情けに涙ぐむ」

なるほど、そんなほっと一息つくような温泉地だった。

 

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