三たびの天狗岳
「女心と秋の空」と言うがそれ以上に変わりやすいのが山の天気だ。
下界が晴れてても、山の上では曇ったり雨が降るのはよくあることだし、1日のうちでも天気の変動が大きい。
この7月に赤岳に登った時には、雲に覆われた頂上ではほとんど眺望がなく、下山した頃に晴れ間が広がり、あーあとため息をついた。
夏も終わり眺望を期待して同じ八ヶ岳連峰の天狗岳に登ることにした。
東天狗岳には2年前の夏と昨年の冬にも登ったが、ともにアプローチでは晴れていたのに、稜線に出ると風雨や吹雪で眺望は望めなかったので、こんどこそと期待して出かけた。
9月の中旬、宿泊した標高2,330メートルに立つオーレン小屋(オーレンとは白い可憐な花を咲かせる多年草)にはすでに電気こたつが用意してあった。オーレン小屋は近くの沢の豊富な水流を利用して自家発電をしてほぼすべての電力をまかなっているそうだ。小屋名物の桜鍋の夕食後こたつに入ると小屋番のおじさんが、火災報知器を各所に配していることをちょっと自慢げに話してくれた。
曇り空の朝、天気の好転を期待して天狗岳を目指した。シラビソの樹林帯を抜け、稜線へ出ると、強い風が吹き霧のため眺望は全くなかった。こりゃ2年前と同じかと思いながら白砂の道を風に煽られながら進んだ。ゴツゴツした岩山の根石岳をまたいで東天狗岳に登頂した。目の前にそびえてるはずの西天狗岳は霧のため見えなかったが、せっかく来たんだし登っとこうかと西天狗に登った。
西天狗に登りしばし休憩していると、にわかに雲が切れた。目前に東天狗がそびえ、奥には前日登った硫黄岳や7月に登った赤岳までの眺望が開けた。
急に気分爽快、思わず笑顔になった(多分)
往復コースなので東天狗に戻り、過去2回見損ねた景色をしばし眺めた。
すっきり快晴だと北アルプスや南アルプスまでも望めるはずだが、全く見えないのとは雲泥の差だ、よしとしよう。
「うつり気な 山の天気に 手を合わす」
今回は変わりやすい山の天気のおかげで、いい眺めをを楽しむことができた。