隣人を憐れむ
日曜日の今日、近所の蕎麦屋「うた」に行った。
ご夫婦と2歳になる冨希子ちゃんでやってる店だ。
残念ながら可愛い盛りの看板娘はお昼寝中だった。
ぼくはいつものように鳥レバーの生姜煮とお新香を頼んで、ビールから日本酒と飲み進めていた。
と、この店で初めてみかける中年の男女一組が入ってきた。
男の方は紺色のTシャツに作業ズボン、濃い色の眼鏡をかけかなり日焼けしていて、「アー暑い アー暑い」と連呼して席に着いた。
隣の席に着くなり「生ビールをください」と注文した。
「ください」だ。なかなかちゃんとしてるじゃないか、やはり人は見かけで判断しちゃいかんなと思った。
すると連れの、ボーダー柄の長袖シャツとジーンズでショートヘアのおばさんが一言、
「水!」
ぼくはこんなガサツな女と一緒でなくてよかったと思うと同時に、連れの男に心から同情した。男がアテを注文すると何か小言をいわれていた。かわいそうに毎日辛い日々を送っているのだろう。
「うた」では以前劇団で舞台道具の仕事をしていた店主の趣味で60年代70年代のロックミュージックが流れていることが多いのだが、今日はロバート・ジョンソンの渋いブルースがかかっていた。
ぼくは急にローリングストーンズの「悪魔を憐れむうた」をリクエストしたくなった。
隣人に幸あれ、アーメン!